純正品入手不可のブラシ交換
エンジン内部で数少ない消耗部品であるブラシ。
摩耗が進み既定の長さに足りなくなると充電不良、アーマチュアの損傷や焼損といった致命的な事態に陥ります。
このような状況になる前にはチャージ(CHG)ランプが点きっぱなしになるはずです(アイドリング時はボンヤリと点灯していますが正常です)。
このような症状が出たらブラシを点検し、摩耗が進んでいる場合はブラシの交換となります。
しかし、三菱純正品としては入手が出来ないため他車の流用をせざるを得ません。
ブラシについて知る
ブラシの機能や役割ではなくME24エンジン用のブラシについて軽く知っておきましょう。
純正のブラシは日本電装製(※)のカーボンブラシでME24エンジンには4つあります。
(※)日本電装製のセルダイなのでブラシも同じメーカですが、後年SANDEN製のセルダイも供給されていることからSANDENのブラシがあるかもしれません。
黄色に着色した部分がブラシ、緑に着色した部分はブラシホルダです(黄色が3つしかないのは引き抜いていないため)。
ピンクのネジはブラシの端子を留めるネジです。
ブラシの横で渦を巻いているように見えるのがブラシをコミュテータマイカ(いわゆる電極部)に押し当てるためのスプリングです。
こちらが摩耗したブラシ。
2012年10月にオイルシールが吹き飛びその時にエンジン分解したついでにブラシを交換しました。
NDはNIPPON DENSOの略、縦のラインは摩耗限界線です。
整備書によるとブラシの新品時の全長は20[mm]、摩耗限界は残量13[mm]と記載されています。
よって使用可能な有効長は7[mm]となります。
13[mm]も残して使用不可とするのは勿体ないと思いますが、整備書にそのように記されているので一応従ったほうが良いと思われます。
では、ブラシはどの位で摩耗するのか・・・
簡単な算数で摩耗度に対する走行距離を計算してみます。
この摩耗ブラシ、残り全長が15.55[mm]です。
新品全長が20[mm]ですので
20-15.55=4.45
となりこれまで4.45[mm]使用したことになります(摩耗限界ラインまでは残り2.55[mm])。
このブラシ交換時点での走行距離は37467.8kmでしたので走行量に対する摩耗量は以下の通りです。
1kmあたり 4.45÷35000=0.000118771185[mm]
1000kmあたり 0.000127143×1000=0.118771185[mm]
10000kmあたり 0.000127143×10000=1.18771185[mm]
1[mm]あたりの走行距離はこれの逆数にすれば良いので、
1÷0.000118771185=8419.55[km]
となります。
この結果から有効長7[mm]で走行出来る距離は、
7×7865.16=58936.85[km]
になります。
よって大体5万~6万キロ走行毎にブラシを交換するサイクルになることが伺えます。
もちろん走行状態(運転状態)に左右されるので一概には言えませんが、あくまでも1つの基準として参考になる値と思います。
ブラシの調達
先述のように純正品は入手出来ませんので他車(他社)用のを見つけるしかありません。
ネットで検索してみるとホンダ・空冷車(N360あたり)のものが入手しやすいようで、今回はホンダ用のを取り寄せてみました。
ちなみに、ホームセンターには電動工具用のブラシがあるようですが、ブラシから生えているコードがかなり細く大電流を流す車用には使用出来ません。
こちらが届いたホンダ用のブラシですが、大きさが違います。
NDの文字が見えることから同じ日本電装製です(どちらかのサイズに統一してくれれば・・)。
具体的にはこのように違います。
数値はそれぞれ読み取って戴くとして、幅と長さは違いますが厚みは同じようです。
長さはME24エンジン用のより6[mm]も長いうえに摩耗限界ラインも1~2[mm]程度奥にあります。
これはかなり長持ちするのではないでしょうか。
そのままでは使えません
なので加工を必要とします。
カーボンブラシはかなり柔らかく爪で引っかくと傷がついたり欠けたりますが、裏を返せば加工しやすいということになります。
長手方向は20[mm]になるようにカットします。
カットは目の細かいノコギリのようなものを使用すると良いでしょう。
「決定版!!」じゃなくても「サメ映画のような不気味なイラスト」が無くてもOKです。
カッターではうまくカット出来ませんでした。
切り口が直角になるようにカットして下さい。
幅は棒ヤスリで細くします。
力を入れれば一気に削れて楽ですが、ナナメに削れてしまったり水平が出なかったりしがちでした。
野菜を弱火でゆっくり炒めるように、時間はかかりますが焦らずゆっくりと行うと良いでしょう。
また、ブラシホルダ内で引っかかりを無くすために、エッジ部も多少削ってME24用と同じようにして下さい。
ホンダ用のはME24用より6[mm]も長いためこれを20[mm]にカットしてしまうのはもったいないと思い少し長めにカットしてホルダに入れたところ、スプリングがブラシをきちんと頭から押し付けてくれず不安が残ったため、仕方なく規定の20[mm]でカットしました。
交換する
4つとも仕上げたら取り付けます。
特に難しいことはありません、入れ替えるだけです。
ブラシをホルダに挿したらスムースに動くか確認して下さい。
動きが鈍い場合はエッジを削るなどして対応して下さい。
ブラシのコードを留めるネジは他のコードと共締めになっていますので、忘れずに留めて下さい。
また、渦巻きのスプリングは抜かないほうが身のためです。抜いてしまうと面倒くさいことになります。
これで向こう5万キロはブラシの心配はいりません~